緑茶、7年ぶり高値 産地冷え込みで生育遅れ
2019年産の緑茶が高値だ。各地の取引会での新茶(一番茶)価格は前年の2割高から2倍になった。春先の冷え込みで生育が遅れたうえ、10連休前の需要という特殊要因が価格を押し上げた。ただ、国内では食の多様化で緑茶離れが進み、高値が需要減を加速させる可能性もある。製茶業界は緑茶の輸出に力を入れてテコ入れを図る。
新茶の価格は前年より大幅高で始まった(19日、静岡茶市場)
19日開催の静岡茶市場(静岡市)の初取引会では、国内生産量の4割を占める静岡県産茶葉の平均単価は1キロ8282円と前年の2.2倍で7年ぶりの高値だった。産地からは「3月下旬からの冷え込みで、葉の伸びる早さが一気に鈍って出荷量が確保できなかった」(JA静岡経済連=静岡市)との声が漏れる。
全国生産の3割を占める鹿児島県の鹿児島県茶市場(鹿児島市)の19日時点の県内茶の平均単価は1キロ2262円と前年より3割高い。JA全農ふくれん茶取引センター(福岡県八女市)でも、福岡県産の茶葉が2割高で推移する。
大型連休前の駆け込み需要も高値の背景だ。静岡茶市場の内田行俊社長は「10連休前に在庫を抱えたい業者の注文が例年より多かった」と話す。
今年の価格は上昇したものの、茶葉の取引価格は近年下落している。全国茶生産団体連合会(東京・千代田)の調べによると、茶葉全体の年間取引価格は17年で1キロあたり1477円と10年間で15%下がった。近年の生産量が横ばいで推移する一方で、緑茶の消費量が同期間でも2割ほど減った影響が大きいとみられる。
需要不振の主因は食の多様化や核家族化の影響で緑茶離れが進んでいることだ。急須に入れる主力の飲み方が手間がかかるために敬遠されている。ペットボトル入り飲料が増えているものの、緑茶需要を押し上げるには力不足だ。ペットボトル入り緑茶に使う茶葉は二番茶など安値品でハラダ製茶(静岡県島田市)の原田康会長は「同じ水分量あたり茶葉の消費量は急須に入れて飲む時の10分の1ほど」という。
昨年より高い取引価格でスタートした19年産だが、静岡産などが出荷のピークを迎える4月末以降に価格が下がる可能性もある。冷え込みで生育が一時的に鈍ったとはいえ、気象庁によると、4~6月は茶葉の産地となる関東から九州地方で平年を上回る気温となる見通しだ。「気温が高まれば出荷数量は次第に増えてくる」(JA鹿児島県経済連=鹿児島市)との見方もある。